民法の判例から

ケース(4):被用者の権限濫用と使用者の責任
【事実関係と判旨】

 Aは、会社Yの庶務課の課長として働いていて、会社の株式の発行の事務を担当していた。Aは、株券用紙、会社の印章、社長印などをもっていた。ある時Aは、米の先物取引に参加しようと考えた。そのためには、証拠金(担保)を提供しなければならない。しかし、自分には資金がなかった。そこでAは、会社Yの株式用紙や印章を使って、勝手に偽の株券を発行してしまった。そしてそれを、取引所の取引員Xに交付した。

 運悪く、Xの取引は失敗してしまい、Xはその証拠金を支払わなければならなくなった。しかしAから交付された株券が偽物だったので、自分のお金を払わなければならなくなった。そこでXは、会社Yに対して、使用者責任に基づく損害賠償を請求して提訴した。

 裁判で問題となったのは、民法第715条第1項の「その事業の執行について」という文言である。会社Yの事業は、米の先物取引とは全く関係がなかった。そこでYは「Aは、自分の権限を濫用して、自分の利益のために株券を発行した。Aの行為は、会社Yの事業範囲には全く属しない。だから、会社Yには、Aの行為の責任を負う義務はない」と主張した。大審院(当時の最高裁判所)も、同じようにこの文言を解釈して、「使用者は、被用者がその本来の職務に関係ある行為をして、第三者に損害を及ぼした場合に限り、第715条の責任を負う」と判断していた。

 第一審でも控訴審でも、裁判所は大審院の解釈にしたがって、「Aの行為は、会社Yの事業範囲には属しないから、『その事業の執行について、第三者に損害を加えた』とは言えない。したがってYには、AがXに与えた損害の責任を負う義務はない」と判断して、Xの請求を棄却した。そこでXは、上告した。

 上告審で大審院は、このような従来の判例を変更することにして、次のように判断した:「Aは、実際にYの株券を発券する立場にあったのだから、たとえそれが権限を濫用した場合であっても、第三者にとっては、それは『その事業の執行について』行われた行為と見えるだろう。他方、使用者Yには、被用者Aがその権限を濫用して、第三者に損害を加えないように注意し、被用者を監督する義務があった。Yはこの注意義務を怠ったのだから、裁判所は、この外形に効力を認めて、それを信じた第三者を保護すべきである。立法の精神や社会通念から考えると、そのように判断する方が正しい。」このように判断して、大審院はXの請求を認めた。

【関連条文】

(使用者等の責任)⇄ มาตรา ๔๒๖, ๔๒๗

民法第715条; ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任およびその事業の監督について相当の注意をしたとき、または相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

② 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。

③ 前2項の規定は、使用者または監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

มาตรา ๔๒๖

นายจ้างต้องร่วมกันรับผิดกับลูกจ้างในผลแห่งละเมิด ซึ่งลูกจ้างได้กระทำไปในทางการที่จ้างนั้น

มาตรา ๔๒๗

นายจ้างซึ่งได้ใช้ค่าสินไหมทดแทนให้แก่บุคคลภายนอกเพื่อละเมิดอันลูกจ้างได้ทำนั้น ชอบที่จะได้ชดใช้จากลูกจ้างนั้น

* * * * *