特別(とくべつ)授業(じゅぎょう) ビジネスと法律(ほうりつ)
(2009年1月12日)

 今回は、(みな)さんに「ビジネスと法律(ほうりつ)」というテーマでおはなをすることになりました。ビジネスに関係(かんけい)する法律(ほうりつ)は、おおきくて二種類(しゅるい)あります。

 公法(こうほう)私法(しほう)

 まず、ビジネスのそれぞれの業種(ぎょうしゅ)ごとに、国家(こっか)がいろいろな規則(きそく)つくて、公正(こうせい)安全(あんぜん)なビジネスがおこなれるように、規制(きせい)おこなます。たとえば、国から許可(きょか)なければおこなないビジネスや、資格(しかく)がなければおこなないビジネスがたくさんあります。また、ビジネスをするときにまもなければならないルールも、それぞれの業種(ぎょうしゅ)にたくさんあります。これらの法律(ほうりつ)は、国家(こっか)がその権力(けんりょく)使つかて、民間の個人(こじん)(あるいは法人(ほうじん))にたいおこな規制(きせい)さだていますから、すべて「公法(こうほう)」にぞくます。

 これにたいて、ビジネスそのものは、(もの)やサービスをたりたりする行為(こうい)で、民間の個人(こじん)同士(どうし)関係(かんけい)です。国家(こっか)直接(ちょくせつ)には関係(かんけい)しません。個人(こじん)同士(どうし)法律(ほうりつ)関係(かんけい)では、すべての当事者が平等(びょうどう)です。権力(けんりょく)関係(かんけい)ではありません。こうした平等(びょうどう)個人(こじん)同士(どうし)法律(ほうりつ)関係(かんけい)について、その原則(げんそく)やルールをさだている法律(ほうりつ)は、「私法(しほう)」とれます。これが二つ目の種類(しゅるい)です。

 契約(けいやく)不法(ふほう)行為(こうい)

 ところで、ビジネスに関係(かんけい)のある私法(しほう)上の法律(ほうりつ)関係(かんけい)は、「債権(さいけん)債務(さいむ)関係(かんけい)」です。「債権(さいけん)」とは、(だれ)かにたいする権利(けんり)のことで、「債務(さいむ)」とは、おなじく(だれ)かにたいする義務(ぎむ)のことです。この債権(さいけん)債務(さいむ)関係(かんけい)にも、実は二種類(しゅるい)あるのです。一つは「契約(けいやく)関係(かんけい)」とれるもので、契約(けいやく)むすことでまれる法律(ほうりつ)関係(かんけい)です。契約(けいやく)には様々(さまざま)なタイプのものがありますが、もっと重要(じゅうよう)なのが「売買(ばいばい)契約(けいやく)」です。ビジネスは普通(ふつう)(もの)やサービスの売買(ばいばい)ですから、ビジネスのほとんどの部分は、この契約(けいやく)関係(かんけい)であるとます。でも、ビジネスがうまくいっている間は、あまり法律(ほうりつ)のことはかんがません。ところが、契約(けいやく)まもれなかった場合(「債務(さいむ)()履行(りこう)」)はどうでしょうか。まず問題になるのが、(だれ)にどんな権利(けんり)(「債権(さいけん)」)があって、どんな義務(ぎむ)(「債務(さいむ)」)をているのか、という(てん)です。そして債権(さいけん)者は、契約(けいやく)どおにその債務(さいむ)履行(りこう)するよう、債務(さいむ)者にもとめることができます。しかし、履行(りこう)がもうできない場合があります。その場合には、債務(さいむ)者は、()履行(りこう)責任(せきにん)をとって、相手(がわ)損害(そんがい)賠償(ばいしょう)しなければなりません。これが「契約(けいやく)責任(せきにん)」です。ビジネスの場合、その当事者同士(どうし)の間でこる法律(ほうりつ)問題の大半(たいはん)が、この「契約(けいやく)責任(せきにん)」の問題です。

 さて、二つ目の債権(さいけん)債務(さいむ)関係(かんけい)とは(なん)でしょうか。それは、契約(けいやく)ではなく、「不法(ふほう)行為(こうい)」からまれる法律(ほうりつ)関係(かんけい)です。(だれ)かが理由(りゆう)なく、他人(たにん)生命(せいめい)身体(しんたい)財産(ざいさん)、その()権利(けんり)利益(りえき)不法(ふほう)侵害(しんがい)した場合、その人は、被害(ひがい)者に損害(そんがい)賠償(ばいしょう)しなければなりません。これが「不法(ふほう)行為(こうい)責任(せきにん)」です。このような問題は、どんな時にでも、(だれ)(だれ)の間にでも、こる可能(かのう)(せい)があります。たとえば(だれ)かが(みち)(ほか)の人にぶつかったとします。その人がころ怪我(けが)をした場合、それはもう「不法(ふほう)行為(こうい)」なのです。しかし、不法(ふほう)行為(こうい)とビジネスとに一体、どんな関係(かんけい)があるのでしょうか。実は、たいへん重大(じゅうだい)関係(かんけい)があるのです。たとえば、ある人がおもちゃをて、友人(ゆうじん)どもにプレゼントしたとします。ところがそのおもちゃには「欠陥(けっかん)」があって、そのども怪我(けが)をしたとします。一体、(だれ)にその責任(せきにん)があるのでしょうか。怪我(けが)をしたども(だれ)とも契約(けいやく)をしていませんから、そのどもたいて「契約(けいやく)責任(せきにん)」を人は(だれ)もいません。ですから、「不法(ふほう)行為(こうい)責任(せきにん)」しかかんがられません。でもプレゼントした人には、明らあきら故意(こい)過失(かしつ)がないかぎ責任(せきにん)はないとかんがられています。では、そのおもちゃをた人でしょうか。それとも、それを製造(せいぞう)した人でしょうか。これが「製造(せいぞう)(ぶつ)責任(せきにん)」とれる問題です。

 (だい)三の責任(せきにん)、「製造(せいぞう)(ぶつ)責任(せきにん)

 この製造(せいぞう)(ぶつ)責任(せきにん)は、契約(けいやく)責任(せきにん)とも、不法(ふほう)行為(こうい)責任(せきにん)とも、それぞれすこずつ()ていますが、むしろ私法(しほう)上の(だい)三の責任(せきにん)だとかんがられています。なぜでしょうか。契約(けいやく)責任(せきにん)不法(ふほう)行為(こうい)責任(せきにん)も、債務(さいむ)者や行為(こうい)者に故意(こい)過失(かしつ)がなければ、裁判(さいばん)(しょ)みとません。これにたい製造(せいぞう)(ぶつ)責任(せきにん)は、故意(こい)過失(かしつ)がなくてもみとられます。これを「厳格(げんかく)責任(せきにん)」とます。こうしたかんが方は、1960年代にアメリカでまれ、1980年代になると、ヨーロッパ諸国(しょこく)でもみとられるようになりました。なぜなら、これをみとないと、消費(しょうひ)者の権利(けんり)が十分にまもれないからです。日本では、1994年に「製造(せいぞう)(ぶつ)責任(せきにん)法」が制定(せいてい)されました。

 タイの現状(げんじょう)

 では、タイではどうでしょうか。消費(しょうひ)保護(ほご)重要(じゅうよう)(せい)は、タイでもはやから認識(にんしき)されていました。たとえば1979年には「消費(しょうひ)保護(ほご)法(พระราชบัญญัติคุ้มครองผู้บริโภค พ.. ๒๕๒๒)」がはや制定(せいてい)され、また、1997年には「不正(ふせい)契約(けいやく)規制(きせい)法(พระราชบัญญัติว่าด้วยข้อสัญญาที่ไม่เป็นธรรม พ.. ๒๕๔๐)」も成立(せいりつ)しました。これらの法律(ほうりつ)は、消費(しょうひ)者を不正(ふせい)なビジネスからまもことを目的(もくてき)にしたものですが、すべて行政法であって、国家(こっか)機関(きかん)不正(ふせい)なビジネスをおこな事業者を取り締とりしまる権限(けんげん)あたえる法律(ほうりつ)でした。消費(しょうひ)者一人一人に、悪質(あくしつ)な事業者をうったえる権利(けんり)みとたものではありませんでした。

 それが2008年、おおきくわりました。二つのあたらしい法律(ほうりつ)ができたのです。一つは「安全(あんぜん)(せい)ける商品(しょうひん)起因(きいん)する損害(そんがい)たいする責任(せきにん)かんする法律(ほうりつ)พระราชบัญญัติความรับผิดต่อความเสียหายที่เกิดขึ้นจากสินค้าที่ไม่ปลอดภัย พ.. ๒๕๕๑)」で、タイの製造(せいぞう)(ぶつ)責任(せきにん)法です。世界(せかい)でももっとあたらしいかんが方を取り入とりい法律(ほうりつ)で、ビジネスをする者にきわめてきびしい損害(そんがい)賠償(ばいしょう)責任(せきにん)みとたものです。もう一つは「消費(しょうひ)訴訟(そしょう)手続(てつづき)法(พระราชบัญญัติวิธีพิจารณาคดีผู้บริโภค พ.. ๒๕๕๑ )」です。この法律(ほうりつ)は、裁判(さいばん)手続てつづをできるだけ簡単(かんたん)にして、よわ立場にある消費(しょうひ)者一人一人に、事業者をうったえるきわめてつよ権利(けんり)みとたものです。


 それでは、これらの法律(ほうりつ)(なん)あたらしく重要(じゅうよう)なポイントなのでしょうか。それは授業(じゅぎょう)の中でおはないたします。

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